1975 年 46 巻 12 号 p. 706-712
肥育牛に尿素を含む飼料を与えたとき,尿石症の発生が少ない傾向のあることが観察されている.そこで尿石症に対する尿素の作用を確かめるために,めん羊を用いて尿素給与時の水分代謝と尿中ミネラル濃度を検討した.めん羊6頭を2区(だいずたん白質区と尿素区)に分け,予備期14日間,試験期10日間よりなる2期について,ラテン方格法による試験を行った.試験期間中には飲水量,尿量,糞中水分量,尿のpH,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿中のCa, MgおよびP濃度を測定し,その結果を分散分析した.その結果,試験の時期間に有意差(P〈.01)を認めたが,尿素給与の影響のみを調べたところ,代謝体重当たりの尿量は尿素給与時に31%増加し(P〈.05),飲水量は17%増加した.一方,糞中水分量,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿のpH,尿中のCaおよびP濃度には尿素給与による影響はみられなかった.しかし尿中のMg濃度は尿素給与時にやや低かった.そのため,尿素の給与は飲水量と尿量を増加させることによって尿石症の発生を予防するのではないかと思われた.なお,本試験ではめん羊の代謝体重当たりの飲水量と尿量との間には,r=0.931という高い正の相関を認めた.