日本畜産学会報
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アルカリゲル化卵白の溶解性とプロテアーゼによる分解性
張 勝善若井 克郎吉野 梅夫山内 邦男
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1975 年 46 巻 2 号 p. 62-67

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抄録

皮蛋の卵白はアルカリによリゲル化し,水に不溶である.本研究では,アルカリでゲル化させた鶏卵卵白の種々溶媒による溶解性および各種プロテアーゼによる分解性を調べた.アルカリゲル化卵白を凍結乾燥し,その100mgを10mlの各種緩衝液などに分散し,30°Cで1時間振盪溶解させ,〓液の蛋白質をLOWRYらの方法により定量して溶解度を求めた.酸性あるいは中性では,アルカリゲル化卵白の溶解度は低く,食塩や塩酸グアニジンの添加,あるいは加熱(75°C,10分)によっても溶解度は増加しない.アルカリ性では,溶解度は高くなり,尿素や塩酸グアニジンの添加,あるいは加熱により溶解度はさらに増加する.アルカリゲル化卵白,またはアルカリ性pHに調整した希釈卵白をペブシン,モルシン,ナガーぜ,プロナーゼあるいはトリプシンにより分解させ,トリクロル酢酸可溶の分解生成物をFOLIN法により測定した.アルカリゲル化卵白またはアルカリ処理卵白は,トリプシン,ナガーゼあるいはプロナーゼにより未処理卵白あるいは熱凝固卵白よりよく分解される.アルカリゲル化卵白はこれらのプロテアーゼにより分解されやすくなるのは,卵白中のトリプシンインヒビターまたはオボインヒピターがアルカリ処理により失活するためと思われる.アルカリゲル化卵白は酸性側pHでもペプシン,モルシンにより,よく分解された.

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