日本畜産学会報
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山羊精子の好気的代謝および生存性に及ぼす 低分圧の炭酸ガスの影響
加藤 征史郎入谷 明西川 義正
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1978 年 49 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

低分圧のCO2が山羊洗浄精子の好気的代謝および生存性に及ぼす影響について,まずCO2分圧にかかわりなくpHを一律に約7.0にそろえた条件下で検討し,ついで25mMまたは50mMの重炭酸塩存在下での影響について検討を加えた.その結果,1) pH7.0においては,代謝CO2の蓄積を許すことにより山羊精子の好気的解糖およびO2消費がCO2不在下にくらべ促進された.代謝CO2を含むフラスコのインキュベーション開始時における気相のCO2分圧は約0.3%であった.しかし気相のCO2分圧を0.3%から1.0%まで,あるいは1%から3%まで高めても,CO2による代謝促進は増強されなかった.このことから,山羊精子がpH7.0で最も活発な好気的代謝を営むのに要するCO2分圧はかなり低いと考えられる.低分圧のCO2による解糖および02消費の促進の程度はほぼ同じであった.02消費はグルコースよりも乳酸の存在下で活発であったが,低分圧のCO2による促進の程度は基質の種類にかかわらずほぼ一致していた.精子の生存性については,CO2の存否による差異がみられなかった.2) 25mMの重炭酸塩存在下では,1%CO2下での解糖,O2消費および生存性は2%および3%CO2,下にくらべ著しく阻害された.解糖およびグルコース-U-14Cからの14CO2生成は2.5%または5.0%下で最も活発であり,生存性は2.5%以上のCO2分圧下で良好に維持された.一方50mMの重炭酸塩存在下では,解糖および14CO2生成に対する至適CO2分圧は5.0%または7.5%程度であり,生存性維持には5.0%以上のCO2分圧が必要であった.

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