日本畜産学会報
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山羊卵巣のコハク酸脱水素酵素
宮本 元石橋 武彦内海 恭三
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1981 年 52 巻 1 号 p. 58-62

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抄録

炭水化物代謝酵素であるコハク酸脱水素酵素(SDH)は,コハク酸からフマール酸を生ずる反応を触媒する.この実験は,山羊卵巣中のSDH活性を組織化学的に明らかにするために行った.発情開始日を0日とし,第5日の非妊娠および妊娠トカラ山羊の卵巣を採取した.クリオスタットで10μmの切片を作製し,NACHLAS et al.の方法に準じてSDHを検出した.得られた結果はつぎのとおりである.(1) SDHの分布と活性の強さに関して,非妊娠山羊と妊娠初期山羊の卵巣の間に差はなかった.(2) 原始卵胞の顆粒膜細胞は,中等度のSDH活性を示した.正常な発育卵胞の顆粒膜細胞には中等度の,卵胞膜には非常に弱い酵素活性が認められた.正常な胞状卵胞では,顆粒膜細胞と卵胞膜は弱い又は非常に弱い酵素活性を示した.(3) 閉鎖卵胞のSDH活性は,正常卵胞に比べて弱かった.(4) 黄体は中等度の,卵巣基質は非常に弱いSDH活性を示したが,胚上皮には酵素活性は認められなかった.前報およびこの実験の成績から,山羊卵巣において原始卵胞と発育卵胞の顆粒膜細胞および黄体のSDH活性は,ステロイド合成に部分的に関連のあることが推察された.

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