日本畜産学会報
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メチオニン過剰飼料摂取ヒナの腸管におけるメチオニン吸収能力
横田 浩臣上田 博史
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1981 年 52 巻 1 号 p. 53-57

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抄録

L型メチオニンの腸管における吸収能力をメチオニン過剰飼料を摂取したヒナと対照飼料を摂取したヒナとで測定し比較した.対照飼料は抽出大豆蛋白質を蛋白質源とし,メチオニンおよびグリシンを添加した蛋白質含量21.5%の飼料であり,メチオニン過剰飼料は対照飼料に1.5%のL型メチオニンを添加した.過剰飼料を給与すると,2日後に増体重および飼料摂取量は対照と比較して減少したので,メチオニン吸収実験は過剰飼料給与開始後4日目から6日の間に行った.吸収能力はin situにおいて再循環型装置を用い,30分間に亘り測定し,環流液からのメチオニンの消失量をもって吸収量とした.環流液にはKrebs-Ringer phosphate溶液を用い,L型メチオニンを2, 10および50mMの濃度に溶解した.過剰飼料摂取群のヒナのメチオニン吸収能力は対照飼料摂取群のものより高くなることはなかった,2mMの場合には,環流開始15分後において過剰飼料摂取群のヒナの吸収量は,対照飼料摂取群のそれに比較して有意に減少した.この結果より,メチオニン過剰飼料摂取群のヒナの腸管内には,メチオニンが高濃度に存在し,高濃度のメチオニンを吸収するようにメチオニン吸収機構が働いていて,低濃度のメチオニンが与えられたときには,それに応答するような吸収機構がすみやかに働かず,吸収能力を十分発揮できず単位時間の吸収量が減少したものと推察される.また,メチオニン過剰飼料を摂取すると,単位長さ当りの腸管重量は減少する傾向にはあるが,有意差は認められなかった.

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