日本畜産学会報
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ルーメン微生物叢の硝酸代謝におよぼす原虫区分および乳酸塩の影響
吉田 條二中村 豊中村 亮八郎
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1982 年 53 巻 10 号 p. 677-685

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抄録

ルーメン微生物叢の硝酸代謝に対する原虫区分の関与の有無や乳酸塩添加の効果をin vitroの条件で追求した.1) 硝酸塩添加飼料への切換えの前後とも,細菌区分に原虫区分が共存し,しかもその濃度が増すほど,硝酸,亜硝酸,および両者含量の減少が速やかになった.また,切換えにより,細菌単独では亜硝酸の出現量が著しく増加したが,原虫区分が共存すれば,むしろ硝酸と亜硝酸の合量の減少量が増した.2) 給与飼料の粗濃比を変えた場合でも,上記と同様に,細菌単独にくらべ,原虫区分共存の方が硝酸,亜硝酸の減少が速やかであり,かつ濃厚飼料の給与割合を高くすると,細菌単独では主に亜硝酸の出現が速くなったが,原虫区分の共存ではその減少が促進された.また,加熱した原虫区分を用いると前述したような共存の影響は認められなかった.この際,細菌単独では,乳酸は見掛け上蓄積したが,総VFAはあまり増加せず,またpHは培養10時間目以降,6.0以下となる場合があった.これに対し原虫区分の共存では,乳酸の蓄積がほとんどなく,総VFAの著しい増加が認められ,かつpHは正常と見なせる範囲内で終始した.3) 乳酸塩添加の培養成績によれば,その添加濃度が増すにつれ,細菌単独では亜硝酸の出現が速くなったが,原虫区分共存の場合は硝酸,亜硝酸,および両者合量の減少が速やかになった.また,この場合,細菌単独では乳酸はほとんど減少せず,総VFAの増加もわずかであった.しかし,原虫区分の共存では前者の減少とともに後者の増加が顕著に認められた.4) 以上のように,ルーメン微生物叢の硝酸代謝への原虫区分の大きな寄与やその代謝促進に対する乳酸塩の有効性が明らかになり,特に原虫区分は亜硝酸還元に強く関与することが示唆された.

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