日本畜産学会報
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イノブタ卵巣のNADHおよびNADPH脱水素酵素活性
宮本 元石橋 武彦中野 栄宮澤 寿広
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1982 年 53 巻 3 号 p. 193-201

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抄録

イノシシとブタの交雑であるいわゆるイノブタは,ブタに比べて繁殖能力,発育能力,肉質などに差異がある.一般代謝やステロイド代謝に関与する脱水素酵素の組織化学的反応は,NADHまたはNADPH脱水素酵素に依存しているので,イノブタ卵巣の機能に関する研究の一環として,卵巣中のこれらの脱水素酵素活性について組織化学的に検討した.成熟イノブタ(雄イノシシ×雌ブタ)11頭と春機発動期の3頭から卵巣を採取し,BARKAとANDERSONの方法に準じて酵素を検出した.表在上皮と卵巣支質は,強いNADHおよび中等度のNADPH脱水素酵素活性を示した.原始卵胞と卵胞腔形成前の発育卵胞は,一般に中等度または強い酵素活性を示した.胞状卵胞のNADH脱水素酵素活性は,顆粒層で中等度であり,卵胞膜内層で非常に強く,外層では非常に弱かった.また,直径5mm以上の胞状卵胞の顆粒層におけるこの酵素活性は,これ以下の大きさの卵胞のものより強かった.黄体以外の卵巣部位におけるNADH脱水素酵素活性には,発情周期による変化はほとんど認められなかった.一方NADPH脱水素酵素活性に関しては,2mm以下の胞状卵胞の卵胞膜内層は顆粒層より強い活性を示したが,2mm以上の卵胞では発情後期を除き顆粒層が非常に強い活性を示し,豚卵巣におけると同様にその活性は卵胞膜内層より強かった,黄体におけるこれらの酵素活性は,発情後期と発情休止期に強く,発情前期と発情期には弱くなった,成熟イノブタの卵巣と春機発動期のものとの間には,酵素活性の差はほとんど認められなかった.イノブタ卵巣中のNADHおよびNADPH脱水素酵素の分布と活性の強さは,NADおよびNADP依存性脱水素酵素のそれとある程度一致する傾向がみられた.

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