日本畜産学会報
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実験的低マグネシウム血症めん羊における血液グルコース代謝
高橋 潔佐野 宏明安保 佳一津田 恒之
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1983 年 54 巻 5 号 p. 302-308

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抄録

めん羊の血液グルコース代謝に対する低マグネシウム(Mg)血状態の影響をU-14C-グルコースによる同位元素希釈法を用いて研究した.低Mg血めん羊は,揮発性脂肪酸トリグリセリド混合物(トリアセチン,トリプロピオニン,トリブチリン)の第一胃内投与と,大豆蛋白,1%塩酸処理乾草,ミネラル•ビタミン混合の給与により実験的に作成した.血漿Mg濃度はミネラル混合へのMgOの添加を中止してから6日以内に0.5mg/dl以下に低下した.そして,2週間後には供試した3頭のうち1頭は激しいテタニーを発現し,痙攣開始2分後に死亡した.血漿Mg濃度の低下に伴い,血漿Ca濃度も低下した.血漿ナトリウム(Na),カリウム(K)濃度には変化がなかった.しかし,死亡した動物で痙攣中,血漿K濃度の著しい上昇(13.7→27.0mg/dl)がみられた.血漿グルコース,遊離脂肪酸,トリグリセリド濃度には明瞭な変化はなかった.血液グルコースのプール•サイズはMg除外2週後には対照期の約80%に低下した.血液グルコースの代謝回転速度は対照期(3.1±0.3mg/kg/分)とMgO除外期(7日目:2.8±0.4,14日目:3.0±0.4mg/kg/分)との間に有意な差はみられなかった.これらの結果から,臨床症状を発現するほどの低Mg血状態においても,めん羊の血液グルコース代謝には大きな影響がみられないことが示された.

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