日本畜産学会報
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ウズラ松果体におけるセロトニンN-アセチルトランスフェラーゼ活性の光周期変化と諸薬剤投与の効果
土井 守中村 孝雄田名部 雄一
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1983 年 54 巻 6 号 p. 363-368

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抄録

ウズラ松果体におけるセロトニンN-アセチルトランスフェラーぜ(NAT)活性の日周リズムにおよぼす外界の光周期の影響について調べた.またさらに,ラット松果体に顕著な効果を示した諸薬剤を雌雄成ウズラに投与し,鳥類と哺乳類とのメラトニン生合成機構の相違を検討した.ウズラ松果体のNAT活性は,消灯(19時)後急激に上昇し点灯数時間前まで高い値を維持した.しかし,点灯1時間前(4時)にはすでに明らかな減少傾向が認められ,点灯直前(5時)には明期の低いレベルを示した.ウズラ松果体のNAT活性は,暗期に高く明期に低い日周リズムを示し,昼夜の酵素活性比は23.5倍とニワトリひなよりも2倍高かった.点灯予定時刻よりさらに連続暗黒処理を行ってもNAT活性は低い値を維持し,再び消灯予定時刻の3時間前(16時)から上昇傾向が認められたが,14時間照明10時間暗黒の対照群に比べ顕著な差はなかった.一方,消灯予定時刻からさらに連続照明処理を行うと光照射によって強く活性は抑制され,日周リズムは消失した.ウズラの松果体は同時に光受容能力および生体時計機構とを備えている可能性があると思われる.暗期開始直前にレセルピンやL-プロプラノロール,また明期にイソプロテレノールやテオフィリンをそれぞれ腹腔内投与しても,ウズラの松果体NAT活性には変化がみられなかった.しかし,暗期開始直前のシクロヘキシミド投与のみ有意に活性を抑制した.ウズラ松果体におけるメラトニン生合成は,交感神経支配を受けているラットとは異なり,ニワトリひなと類似した機構により調節され,NAT酵素新生により日周リズムを発現していると考えられる.さらに,鳥類の松果体自体が光受容能力を持ち,哺乳類とは異なる独自の生体時計機構が存在し,その機構により松果体のNAT活性およびメラトニン量の日周リズムを発現している可能性があるものと推察される.

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