日本畜産学会報
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子牛に対する愛撫がその後の扱いやすさに及ぼす影響
佐藤 衆介志岐 秀雄山崎 藤登
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1984 年 55 巻 5 号 p. 332-338

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抄録

個体として扱いやすい牛を作る目的で,哺乳期の子牛を愛撫して飼育した.その後,継時的に個体としての扱いやすさを人に対する恐怖反応性から,群としての扱いやすさを他個体との関係(社会行動)から調査した.5頭の子牛を生後すぐ単飼し,35日齢まで毎日90分間全身をなでたり,軽くたたいたりして飼育し,35日齢で早期離乳した.2か月齢からは同じ頭数の対照牛と群飼した.人に対する恐怖反応性を,採食時に人が飼槽に手を入れた場合,人が牛房内に入った場合,体各部位に触れた場合および牛衡器までの引き運動時に調査した.社会行動として敵対関係を表わす攻撃行動,親和関係を表す社会的舐行動および集合関係を表す放牧時個体間距離を調査した.その結果,引き運動以外の愛撫処理に似る操作に対しての,愛撫処理牛の恐怖反応は,対照牛のそれに比べ一時的に弱かったが,その差は愛撫処理を終えてから2~5か月後から徐々になくなり,永続性がみられなかった.愛撫処理に似ない操作である引き運動に対する反応性および社会行動については,初期愛撫の効果はほとんどみられなかった.このように後の行動に永続的な効果をもたらさないことから,一時的な初期愛撫は個体としての扱いやすさをほとんど改善しないし,群としての扱いやすさもまったく阻害しないものと考えられた.

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