日本畜産学会報
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カビ発酵サラミソーセージの熟成風味発現に関する基礎的研究
中村 豊郎沼田 正寛橋本 小由利
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1985 年 56 巻 12 号 p. 938-946

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抄録
カビ発酵サラミソーセージ(M. F. S. S.)の製造工程中における諸成分およびたんぱく質成分の変化を測定し,同時に熟成風味生成や過度の乾燥防止などの目的から,表面に着生させたカビを分離•同定し,その有効性を検討した結果,次のことが明らかになった.(1) M. F. S. S.表面部に着生したカビは,乾燥後期の一部汚染菌を除き全期間を通じて常に一菌種が優勢であり,同定の結果Penicil-lium miczynskiiであることが明らかとなった.(2) 本菌はツァペックドックス寒天培地で食塩濃度6%,pH5.0,培養温度20°Cにおいて最大の発育を示した.(3) 本菌が産生するプロテアーゼおよびリパーゼは小麦麸20°C培養20日目で最大活性を示し,その活性は,それぞれ76.0 unit, 39.3 unitであった.(4) 本菌または本菌から抽出した粗酵素液を用いた再現性試験では,M. F. S. S.類似の培地で菌自体を培養した時にその有効性が確認できたが,粗酵素液ではその効果は認められなかった.(5) SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定したM. F. S. S.表層部のたんぱく質成分には,工程の進行に伴う経時変化は認められなかった.(6) 以上のように供試のM. F. S. S.は,P. miczynskiiを一種のスターターカルチャーとして同菌の脂肪分に対する作用等により,独特な芳香付けが行なわれると考えられる.
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