日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
斜め空中写真法による放牧牛の行動解析
林 孝長嶺 慶隆西田 朗
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 56 巻 6 号 p. 439-446

詳細
抄録

放牧牛群の社会関係を調査するために,斜め空中写真法による行動の記録と解析を試みた.放牧地の近くに立つ塔の上から放牧牛の行動を確察しながら,市販の35mm一眼レフカメラを斜め下方向に向けて,3分間隔で連続撮影した.地上座標が既知の牧柵などと共に放牧牛の写真をとれば,放牧牛などの地上座標を写真上の座標から推定することができる.この斜め空中写真法により20頭および8頭からなる2群の各個体の3分間ごとの位置を求め,これを用いて個体間距離および移動距離を計算した.放牧牛の位置する頻度は牧区の角と水飲み場が高い傾向にあった.育成牛と成雌牛を混合した群では,育成牛と成雌牛間の個体間距離は育成牛間および成雌牛間のそれよりも有意に大きいことが多く,これらは牧区内に無作為に2点を配置してシミュレートした値と区別することは困難であった.つまり育成牛と成雌牛は互いに他と関連せずに行動していたといえる.群内で特定の2個体が他よりも有意に小さな個体間距離をもつならば,この2個体は互に親密であると考えられ,この親密な関係を図示することによって牛群内の社会構造を単純化して表現することができる.個体間距離の比較によって,育成牛群内に網目構造あるいは直線構造の内部構造をもつサブグループが見出され,さらに成雌群内には直線構造のサブグループが見出された。しかし他のどの個体とも親密な関係をもたないはなれ牛も少頭数認められた

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
次の記事
feedback
Top