日本畜産学会報
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検定規模に制限がある場合の黒毛和種種雄牛の2段階選抜における最適選抜率
向井 文雄新内 義和福島 豊一
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1985 年 56 巻 6 号 p. 447-455

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抄録

黒毛和種種雄牛の選抜は検定場方式による能力検定と後代検定の2段階選抜が実施されている.本研究では検定規模(NT)が限られた条件下における能力検定時の選抜率(p1)と期待される改良量との関係を検討した.2段階選抜のモデルは現行の黒毛和種種雄牛の検定方式を基にした.最終的に選抜する種雄牛頭数は検定済種雄牛頭数(200頭)とその更新率(20,25,33.3%)により変化し,世代間隔は更新率ごとにそれぞれ7.5,7.6.5年とした。NTは1000,2000,3000とし,能力検定頭数(N)を変えることにより種々の検定構成割合を設定した.改良目標はH=aXGX+aYGYとした.GXとGYは能力検定の選抜対象形質(X)および後代検定のそれの育種価,aXとayは相対経済価値である.改良量はCOCHRAN(1951)の式により推定し,世代間隔で除した年当たりの改良豊(ΔH/y),さらに検定総経費で除した年•経費当たりの改良量(ΔH/yc)を算出した.XとYの遺伝率はそれぞれ0.6と0.4,遺伝相関は-0.25と設定した.aX/aY=1の時のΔH/yはNTおよびNが大きくなるほど高くなった.最適なp1は,更新率によって異なるが,NTが1000(N=600)で9~15%,2000(N=1200)で4~8%,3000(N=2000)では3~4%の範囲にあった.なお検定構成割合や選抜率が不適であれば,NTを大きくとっても,小さい場合よりもΔH/yは低下することが認められた,aX/ay=0.5では,Nによる顕著な差異はな高,いずれのNTにおいても30~40%程度の能力検定割合で,p1が25~30%時に最適なΔH/yが期待できた.ΔH/ycは,aX/ay値やNTにかかわりなく,更新率が20%,またNが少ないほどすぐれていた.最適なp1は,ax/aY=1の場合,NTが1000(N=200)では24%,2000(N=300)では18%,3000(N=300)では19%となっ.aX/ay=0.5では,いずれのNTにおいてもN=200で,p1は33,40,45%と大きくなった.以上のように,NTに制限がある場合には,検定構成割合や両選抜時における選抜率の組合わせにより改良量は顕著に変化することが明らかになった.

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