日本畜産学会報
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ルーメン微生物凍結乾燥標品中に保持される飼料消化能について
鷹津 秋生稲葉 元寺島 福秋伊藤 宏
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1985 年 56 巻 6 号 p. 505-511

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抄録

オーチャードグラス乾草摂取めん羊から採取したルーメン液(微生物)の凍結乾燥標品を調製し,標品中に保持される飼料消化能の活性について検討した.採取したルーメン液を直ちに-20°Cまたは-70°Cで凍結した後凍結乾燥機で乾燥し,標品を調製した.脱気蒸留水で標品を元の量に復元したものまたは新鮮ルーメン液に人工唾液を加えて培養液として,セルロース(ろ紙粉末),オーチャードグラス乾草,アルファルファミール,フスマ,大麦およびトウモロコシを基質としin vitro消化試験を行なった.いずれの標品もセルロースを全く消化しなかったが新鮮ルーメン液では32%のin vitro消化率(IVDMD)を示した.2種類の標品によるIVDMDはアルファルファミールを除くすべての基質においてほぼ同じ値を示した.オーチャードグラス乾草およびアルファルファミールの標品によるIVDMDは新鮮ルーメン液によるそれより明らかに低かったが,フスマ,大麦およびトウモロコシのIVDMDは両者でほぼ同じ値を示した.標品による培養液中のVFA濃度はいずれの基質においても新鮮ルーメン液のそれより有意に低かったが,乳酸濃度は著しく高かった.以上の結果は標品中にはデンプン分解菌群の活性は保持されるがセンイ分解菌群の活性は保持されないことを示している.

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