日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
去勢肥育牛の筋肉中脂質含量に及ぼす品種と栄養水準の影響
善林 明治鍋田 肇元辻 毅
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 59 巻 1 号 p. 39-48

詳細
抄録

黒毛和種,日本短角種およびホルスタイン種の去勢牛それぞれ合計66,37および16頭を,前2品種については中一高栄養と高栄養の2水準で,ホルスタイン種は高栄養水準のみで肥育し,体重400kg前後から650kg前後までに亘って屠殺し,いずれも枝肉左半丸を筋肉,脂肪,骨などの組織別に分離,構成を調べた.筋肉中の脂質含量の測定は,黒毛和種とホルスタイン種では8筋肉12部位,日本短角種では7筋肉11部位について行なった.黒毛和種は発育性に特徴のある2種雄牛系統の産仔を用い,系統間の比較も行なった.黒毛和種は日本短角種およびホルスタイン種よりも,ほとんどの筋肉で脂質含量が高かったが,黒毛和種の系統間ではほとんどの筋肉で差はみられなかった.中-高栄養水準で肥育した黒毛和種では,高栄養水準で肥育したものより,多くの筋肉で高い脂質含量を示したが,日本短角種では水準間の差はみられなかった.また日本短角種とホルスタイン種との間にも差はみられなかった.枝肉中の脂肪組織重量に対する筋肉中の脂質含量の相対成長係数は,何れの品種でもほとんどの筋肉で1と同じか1より小さく,筋肉中の脂質の蓄積が枝肉中のその他の脂肪組織よりも,早期に成熟すると考えられた.筋肉中の脂質の蓄積は,枝肉中の脂肪組織の蓄積割合と正の相関があるが,とくに黒毛和種とホルスタイン種では個体差が大きく,肥育度から筋肉中の脂質蓄積の程度を推定することは困難であると考えられた.胸腰最長筋中の脂質蓄積量に対する説明変数として牛の成熟率,屠殺日齢および枝肉中の脂肪組織割合を用いた場合,高栄養で肥育された牛では屠殺日齢,中-高栄養で肥育された肥育期間の長い牛では,枝肉中の脂肪組織割合がそれぞれ第1の有意な説明変数であった.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top