日本畜産学会報
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低マグネシウム血症めん羊のカルシウム動員について
寺島 福秋松延 康柳沢 哲夫伊藤 宏
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1988 年 59 巻 1 号 p. 75-81

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抄録

反すう家畜の低マグネシウム(Mg)血症は抵カルシゥム(Ca)血症を伴うことが多い.本実験は低Mgの発症し易い低Mgおよび高カリウム(K)飼料を摂取しているめん羊のCa動員状態を検討するために行なった.
平均体重45kgの去勢雄めん羊にMgおよびK含量のそれぞれ異なる4種類の半精製飼料(対照低Mg,高Kおよび低Mg-高K)を7-10日間給与した.各飼料区めん羊の頸静脈から,体重kg当り0.263mmolのNa2EDTA•2H20溶液を60分間注入した.EDTA注入による血しょう中の全Caおよびイオン化Ca濃度変化からCa動員量を算出した.血しょう中のMg濃度は対照,低Mg,高K,低Mg-高K飼料区でそれそれ,1.05,0.55,0.74および0.61mmol/lの値を示し,低Mgおよび高K飼料給与によって低Mg血症が発症した.全CaおよびK濃度は各飼料区でほぼ同じ値であった.イオン化Ca濃度はEDTAの注入によっていずれの区でも直線的に低下したが,その低下割合は低マグネシウム血症めん羊で大きい傾向を示した,EDTA注入時(60分)のCa動員量は低Mg,高K,および低Mg-高K飼料を摂取した低Mg血症めん羊(3.55mmol/60min)で対照区のそれ(4.98mmol)より有意に低かった.これらのことから低Mg血症めん羊はCa動員機能が低下し,低Ca血症になり易いことを示唆した.

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