日本畜産学会報
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低温環境下における豚のエネルギー,蛋白質および脂肪蓄積量の変化
斎藤 守
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1988 年 59 巻 10 号 p. 841-847

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抄録

肥育豚(体重約30~8kg,総数で38頭)および繁殖豚(体重約120kg,総数で4頭)に,それぞれ肉豚用または成豚用配合飼料を制限給与し,熱的中性圏(濃度20.2±0.6°C,湿度61±2%)および低温環境下(温度7~8°C台,9~10°C台および13~14°C台で実験,湿度60±4%)で約1ヵ月間飼育後に,3日間の呼吸試験(間接法•開放式)ならびに窒素(N)出納試験を実施し,エネルギーおよびNの蓄積量を算出した.得られた結果は,次のように要約される.
(1) 低温環境下では,熱的中性圏の場合に比べて,糞および尿へのNの排泄量が有意(P⟨0.05またはP⟨0.001)に多く,結果としてNの蓄積量が有意(P⟨0.01)に少なくなった.(2) 低温環境下では,熱的中性圏の場合に比べて,尿へのエネルギーの排泄および熱産生量が有意(P⟨0.001)に多く,結果としてエネルギーの蓄積が有意(P⟨0.01)に少なくなった、(3) 熱的中性圏に対する低温環境下でのエネルギー蓄積の減少量(Ed,kcal/W0.75kg/day)は,環境温度(T,°C)が下限の臨界温度(Tc,°C)より低下するにつれて,直線的に増加した[Ed=5.18+5.67(Tc-T)].(4)低温環境下での蛋白質蓄積の減少量は,Tc-Tとの間に一定の傾向は認められず,全体の平均で1.9±0,8g/W0.75kg/dayとなった.(5) 熱的中性圏に対する低温環境下での脂肪蓄積の減少量(Fd,g/W0.75kg/day)は,Tc-Tが大きくなるにつれて直線的に増加した[Fd=-0.95+0.58(Tc-T)].(6) 以上の結果から,Tc-Tの値が比較的小さい時は,生として蛋白質蓄積量を減少させることにより,またTc-Tの値が大きくなると,主として脂肪蓄積量を減少させることによって,低温環境下で体温維持に余分に必要なエネルギーを得ているものと考えられた.

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