日本畜産学会報
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筋肉内に存在するコラーゲン分解能を持つ酵素について
松永 孝光池内 義英鈴木 敦士斉藤 信
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1989 年 60 巻 2 号 p. 141-150

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抄録

肉の熟成過程に起こる結合組織の変化を明らかにするための一つの方法として,筋肉内からロラーゲン分解能を持つ酵素の精製を試み,その酵素を使ってコラーゲン分解活性の性質を調べた.さらにコラーゲン分解性酵素の各種コラーゲンおよび筋肉構成タンパク質に対する分解力についても検討した.結果は次のとおりである.1) 家兎骨格筋からpH3.7による酸性抽出,硫安分画および各種クロマトグラフィーによってコラーゲン分解能を持つ酵素を部分精製した.2) 本酵素の至適pHは3.3と4.4付近の二点が認められた.3) 本酵素は不溶性コラーゲン(牛アキレス腱)および可溶性コラーゲン(子牛の皮膚)の両方に対して分解能を有していた.4) 各種コラーゲンとコラーゲン分解性酵素との相互作用を電気泳動法で調べた結果,本酵素はコラーゲンのβおよびα-サブユニットをいずれも分解するが,β-サブユニットの方をより激しく分解することが分かった.5) 電子顕微鏡による観察から,本酵素はコラーゲン線維の膨潤,小片化並びに開裂などを引き起こすことが明らかになった.6)筋肉構成タンパク質にコラーゲン分解性酵素を作用させたところ,ミオシンとコネクチンは速やかに分解されたが,アクチンとα-アクチニンはほとんど分解されなかった.一方,トロポニン-Tとトロポニン-Iは分解されたが,トロポニン-Cやトロポミオシンの分解は認められなかった.

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