日本畜産学会報
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牛枝肉の形状に及ぼす枝肉構成組織の影響
善林 明治江本 行宏
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1990 年 61 巻 10 号 p. 891-896

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抄録

牛枝肉の形状と枝肉を構成する組織との関係を黒毛和種2系統,ホルスタイン種,日本短角 種および交雑種の,合計122頭の去勢肥育牛を用いて検討した.各肥育牛は70-100kgの体重間隔で4段階にわたって屠殺し,左半丸枝肉について,23のサイズに関する測定値と筋肉,脂肪,骨および腱を含むその他の組織の各重量を求めた.サイズの測定値から求めた枝肉形状についての4つの主成分と23の枝肉測定値を従属変数とし,枝肉組織重量を独立変数として両者間の関係を,重回帰分析法により検討した.枝肉形状のうちのサイズを示す第1主成分と各組織との間には,いずれも高度に有意な関係が見られた.枝肉の薄さの因子である第2主成分は,骨が多く筋肉,脂肪の少ないものとの関係が大きかった.枝肉測定値に対する各組織の標準偏回帰係数から,枝肉の長さは骨の成長と関係が深く,成長が早期に終了する形質であった.筋肉と脂肪組織の成長は,枝肉の周囲長と厚みの増加と強く関連していた.枝肉のサイズ,あるいはいくつかの枝肉測定値と各組織の成長との関係式では,品種間に差が認められた.枝肉形状の品種間差は,品種による熟性の違いに起因しているばかりでなく,いくつかの体部位で各組織の成長が品種により異なる部分があり,その結果組織の分布に違いが生じるためでもあることが示唆された.

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