繁殖能力に発現する父性ヘテローシスを推定するため,近交系のC57 BL/6とBALB/c,それらの1代雑種(F1),F1雌にBALB/c雄を交配した戻し交雑第1代(BC1),BC1雌にC57BL/6雄を交配した戻し交雑第2代(BC2)の雄をICR雌に交配した.F1,BC1,BC2の相対的ヘテロ接合度は,それぞれ100,50,75%となる.分娩率,雄と同居後分娩までの所要日数,産子数および1腹総体重に発現した父性ヘテローシスは,それぞれ8~19%,5~8%,13~15%および10~16%でBC1とBC2の分娩率を除いて有意であった.しかし,ヘテロ接合度とヘテローシスの強さとの間には関連性が見られなかった.父性ヘテローシスの機構を明らかにする目的で,同じ近交系とそれらの正逆F1の精巣上体精子の体外受精能をICR卵子を用い比較した.2細胞期まで発育した率は,正逆F1でそれぞれ92と87%,C57BL/6とBALB/cでそれぞれ75と72%であった.明らかに雑種の精子の受胎率が高かったことは,繁殖能力に発現する父性ヘテローシスの一つの要因として雑種の精子の活力の向上があるものと推測された.