日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
マウス•ラット異属間胚の偽妊娠ラット子宮内での発育
マウス•ラット異属間複数集合キメラ胚
辻井 弘忠粟山 和也
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 61 巻 10 号 p. 913-918

詳細
抄録

本研究では,マウス•ラット異属間集合キメラ胚の偽妊娠ラット子宮への着床とその生育期間を延すことを目的に,1っのマウス胚に対して複数のラット胚を集合し,胚盤胞まで発育したものを偽妊娠ラットの子宮に移植した.実験にはICR系マウス,Wistar系ラットの成熟雌を使用した.培養液には0.3%BSA添加DMEMを用い,胚の培養は37°C,5%CO2 in airの気相下で行なった.集合胚の組合せは,(1)2つのラット胚の中心に1つのマウス胚を集合,(2)3つのラット胚の中心に1つのマゥス胚を集合,(3)マウス胚のみ3つを集合,(4)マウス胚のみ4つを集合,(5)ラット胚のみ3つを集合,(6)ラット胚のみ4つを集合の6群で行なった,胚盤胞への発生率はそれぞれ(1)80.0%,(2)77.8%,(3)55.6%,(4)37.5%,(5)75.4%,(6)70.1%であった.集合する胚の数を増やすと胚盤胞への発生率が低下する傾向が見られた.また,マウス胚の胚盤胞への高い発生率がマゥス•ラット異属間キメラ胚盤胞の形成を促進することが示唆された.(1)と(2)で得られた異属間集合キメラ胚盤胞合計55個を24頭の精管結紮雄との交配による偽妊娠ラットに移植を行ない,偽妊娠8から10日目まで合計4個の着床胚の存在を認めた.それらのうち偽妊娠10日目の胚は,ほぼ完全な着床の状態を示していた.胚の蛍光染色の結果,複数のラット胚の中心に配置されたマウス胚は,発生したキメラ胚盤胞中において一箇所にかたまることなく幾つかの群に分散し,胚内に広く分布する傾向が見られた.この事により,マウス•ラット異属間複数集合キメラ胚は,特に微細構造的不適合を補う点で,それら異属間キメラ胚の偽妊娠ラット子宮への着床を促進したものと思われた.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top