日本畜産学会報
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雌鶏の終脳旧線条体の破壊による性行動の変化
園田 立信黒崎 順二
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1990 年 61 巻 10 号 p. 907-912

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抄録

鶏の終脳旧線条体後内側部は哺乳動物の扁桃体に相当する辺縁脳と考えられるので,雌鶏の旧線条体を電気的に破壊して恐怖反応と社会行動の変化を観察した.観察者が手をケージ内に挿入しても鶏は恐怖及応を示さず,静かに避けるだけであった.同様にして,他の雌鶏の頭部を挿入しても攻撃せずに逃げるだけであった.大型のケージ内で他の雌鶏と初対面させた場合も攻撃せずに逃げた.同様にして,雄鶏と対面させた場合は,雄が接近してきても拒否や逃避を示すことはなかった.しかし,許容の性的うずくまりを示すこともなかった.さらに,乗駕された後も性的うずくまりを示さず,雄の足踏みに対して尾上げで反応することもなかった.なお,実験鶏の卵巣機能は殆ど正常と考えられた.以上の結果より,雌鶏の旧線条体後内側部の機能は情動高進並びに性行動のホルモン依存の行動過程に関与するとともに,性的認知を行なって交尾行動の発現に重要な役割を果していると考えられた.

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