1991 年 62 巻 9 号 p. 849-853
食欲を調節する機構が中枢内に存在することが知られている.それらの機構には様々な神経伝達物質が関与している.モノアミンに属するノルアドレナリンおよびセロトニンは神経伝達物質として作用していることが明らかにされている.本研究では,ラットの採食に対するノルアドレナリン系およびセロトニン系の関与について調べることを目的とした.ノルアドビナリンはアルファ受容体とベータ受容体のアゴニストである.自由採食ラットの側脳室内にノルアドビナリン単独を投与したところ用量依存的に採食量が増加した.ノルアドレナリンの中枢投与と同時にベータ受容体アンタゴニストのプロプラノロールを末梢投与すると,ノルアドレナリン単独の場合よりも採食量が減少した,また,ノルアドレナリンの中枢投与と同時にセロトニンアンタゴニストのシプロヘプタジンを末梢投与すると,ノルアドレナリン単独投与の場合よりも採食量が減少した.さらに,シプロヘプタジン単独投与では採食量が増加した.以上の結果から,ノルアドレナリンによる採食はアルファ受容体およびベータ受容体の刺激に依存していることが示唆された.さらに,シプロヘプタジン単独による採食行動の刺激にはノルアドレナリン系とは独立した採食刺激神経系が関与している可能姓が示唆された.