日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
牛肝臓および肝消化物の腸内pHにおける非ヘム鉄の溶解性に及ぼす影響
沼田 正寛副田 理美近藤 良房中村 豊郎
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 64 巻 6 号 p. 645-651

詳細
抄録

In vitroでの非ヘム鉄の可溶化に及ぼす牛肝臓およびその消化物の影響を検討した.非ヘム鉄として用いたFeCl3の腸内pHにおける可溶化は,牛肝臓から調製した水溶性タンパク質画分(WPF)およびその消化物(WPF消化物)の濃度に依存して著しく促進された.可溶化成分はWPFが分子量10,000~3,000の画分に,WPF消化物が分子量3,000~1,000の画分にそれぞれ存在した.WPFの各画分を消化した時,可溶化能は分子量10,000~3,000の画分を消化した時だけに認められた.ゲル濾過およびイオン交換HPLCで分離した結果,WPF消化物の可溶化成分は分子量2,500付近で少なくとも3種類の電荷の異なるペプチドであると推定された.分子量2,500付近の画分を構成する主要アミノ酸はGly, Leu, Alaであり,Cysは検出されなかった.しかし,この画分ではAsxより等電点の低い領域に数本のピークが観察され,他の画分とは異なる特徴を示した.分離前のWPF消化物の鉄可溶化能力は10.8~12.8μg/mgタンパク質と算出され,それは家禽肉の塩溶性タンパク質画分で認められた能力の約5倍に達した.以上のように,消化前後の牛肝臓はin vitroにおいて顕著な鉄可溶化能を有し,腸管内での非ヘム鉄の沈澱あるいは重合を阻止することで生体利用率の向上に寄与する可能性を示唆した.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事
feedback
Top