日本畜産学会報
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発酵乳製造用乳酸菌における生育抑制作用ならびに Lactobacillus delbrueekii subsp. lactisの 生産する抗菌性物質について
原 和志宮本 拓片岡 啓
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1994 年 65 巻 7 号 p. 674-681

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抄録

14種の市販発酵乳および15種の市販発酵乳用スターターカルチャーを試料として乳酸菌を
分離し,菌種の同定を行なった.分離した47菌株の乳酸菌のうち28菌株がLactobacillus属で,これを
菌種別にみるとLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus 18株,L. helveticus 5株,L. acidophidus 2
株,L. casei 2株およびL. delbrueckii subsp. lactis 1株であった.また,残りの19菌株はすべてStrep-
tococcus salivarius subsp. thermophilusであった.分離した乳酸菌相互間における生育抑制作用を検
討した結果,S. salivarius subsp. thermophilusでは16菌株にLactobacillus属に対する抑制作用がみ
られた.Lactobacillus属相互間においては,L. helveticus, L. acidophilus, L. caseiおよびL.
delbrueckii subsp. lactisに幅広い抗菌スペクトルを示す菌株があった.なかでもL. delbrueckii subsp.
lactis 5001株は27菌株すべてのlactobacilliに対し抑制作用を示した.MRS液体培地においてL.
delbrueckii subsp. lactic 5001株培養ろ液が示す生育抑制効果は,過酸化水素および低分子量抗菌性物
質の両作用によるものであった.抗菌性物質の推定分子量は1,000以下であり,その抗菌活性は7種の
蛋白分解酵素およびアミラーゼの作用によって失われなかった.また,抗菌活性は121°C,15分の加熱
処理およびpH(2-10)に対しても安定であった.

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