日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
黒毛和種の基礎集団並びに現集団における屠肉性に関する遺伝率のREML推定
守屋 和幸道後 泰治佐々木 義之
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 65 巻 8 号 p. 720-725

詳細
抄録

黒毛和種の屠肉性に関して,1960年以前に出生した個体を基礎世代と見なした場合(基礎集団)および肥育牛の父母を基礎世代と見なした場合(現集団)の遺伝率のREML推定を行なった.さらに,血統情報の量および血統の遡り方が推定値に及ぼす影響についても検討した.REML法により求めた基礎集団の遺伝率推定値はそれぞれ,DCG(枝肉重量/出荷時日齢):0.373,枝肉重量:0.351,胸最長筋面積:0.518,バラ厚:0.398,皮下脂肪厚:0.420,歩留基準値:0.478およびBMSナンバー:0.593であった.一方,現集団の遺伝率推定値はそれぞれ0,325,0.326,0.495,0.364,0.256,0.381および0.644であった.血統情報として父のみを取り上げた場合,遺伝率推定値はいずれの形質についても過小評価される傾向にある反面,父側の血統情報のみを追加した場合は血統情報量の増加とともに逆に過大評価される傾向にあった.一方,父母の血統を同時に遡った場合,血統情報量の増加とともにその推定値は基礎集団の推定値に近づく傾向にあった.これらの結果から,基礎集団の遺伝率推定に関しては血統情報の量だけでなく血統の遡り方も重要であることが示唆される.すなわち,肥育牛の曾祖父母あるいは祖父母まで遡った血統情報を用いることで基礎集団の遺伝率推定が十分可能であるものと推察される.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top