日本畜産学会報
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鶏肉工場で屠殺後処理中の鶏胸肉の物理化学的性質の変化
根岸 晴夫吉川 純夫
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1994 年 65 巻 8 号 p. 738-745

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抄録

鶏肉工場で処理中の鶏肉の死後変化を明らかにするために,屠殺後18,48分,1~2,3~4および24時間経過した鶏胸肉の温度,pH,剪断力価(SFV),ATP関連化合物および筋原線維の小片化率(MFI)とSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)パターンの変化を調べた.鶏肉のpH,SFVおよびMFIは出荷時に当る死後3~4時間で最も大きく変化し,屠殺後18分に比べ,SFVの著しい低下とpH値の僅かな低下およびMFIの上昇が見られた.その後翌日までの変化は少なく,屠殺当日の出荷時には十分な軟らかさに達していると考えられた.また,ATP含量が死後48分で急速に減少したのに対して,IMP含量は増加し,24時間後もほぼ同水準を維持した.SDS-PAGEでは,死後3~4時間後に分子量マーカー31kDa付近に分子量が30kDaと32kDaと推測される2つのバンドの出現を認めた.これらのバンドの出現は熟成中の牛肉で得られる30kDa成分12)の出現よりも速かった.以上から,鶏肉の死後変化は非常に速く,そのおいしさのピークは処理当日の夕方から翌日までにあると推定された.

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