日本畜産学会報
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黒毛和種去勢牛の肥育後期における粗飼料給与水準が枝肉性状および枝肉脂肪の脂肪酸組成に及ぼす影響
木村 信煕木村 聖二小迫 孝実井村 毅
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1996 年 67 巻 6 号 p. 554-560

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抄録

黒毛和種去勢牛の肥育後期における粗飼料の給与水準が,枝肉の性状および枝肉脂肪の脂肪酸組成に及ぼす影響を検討するため,同一種雄牛の息牛8頭を肥育した.粗飼料としては質の安定したイナワラのみを用い,その給与水準が全飼料TDN中の25%(R25区)および15%(R15区)の2区を設定し,320日間肥育した後,全頭同時に屠殺し枝肉性状と枝肉脂肪の脂肪酸組成を測定した.イナワラを抑制したR15区ではR25区に比べ,皮下脂肪の厚さが有意に厚く,脂肪交雑と枝肉歩留が高い傾向を示した.また肉色が有意に淡く,肉の光沢,しまりが有意に高かった.枝肉脂肪の脂肪酸組成ではR15区は皮下脂肪においてC18:0(炭素数:二重結合の数)が有意に低く,不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の比率が有意に高く,胸最長筋においてはC16:1が有意に高く,C18:0が有意に低く,また腎臓周囲脂肪においてはC18:0が有意に低く,C18:1,不飽和脂肪酸,不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の比率が有意に高い値を示した.以上の結果はR15区の方が肉質等級が高く,また脂肪酸組成からみた肉質も好ましいものであることを意味し,肥育後期におけるイナワラ給与水準が,脂肪交雑や皮下脂肪の厚さなど枝肉の脂肪蓄積量に影響を及ぼすこと,同時に脂肪酸組成が変化するなど枝肉脂肪の質の変化に対しても影響を及ぼすことを明らかにし,肥育後期の粗飼料水準の設定が,肉牛肥育上の重要な技術のひとつであることを示唆した.

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