日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
旨味(グルタミン酸ナトリウムおよび5'ーイノシン酸ニナトリウム)に対する牛の味覚反応
中西 良孝岩崎 円萬田 正治
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 67 巻 6 号 p. 561-566

詳細
抄録

黒毛和種とホルスタイン種との交雑種成雌牛5頭を供試し,グルタミン酸ナトリウム(MSG),5'-イノシン酸ニナトリウム(5'-TMP)および両者の混合物質に対する味覚反応を2瓶選択法により検討した.これらの味物質を水道水に溶かしてMSGと5'-IMP乳ついてはそれぞれ7段階,両者の混合物質については5'-IMPの濃度(w/w)を一定にして5'-IMPとMSGの混合比を変え,5段階の濃度を設定し,低濃度から高濃度へと上昇法で実験を行った.水道水を対照とした総飲水量に対する味溶液の摂取割合を選好指数とし,x2検定(5%水準)により選好指数60.3%以上を嗜好範囲,39.7%以下を拒絶範囲と定義した.牛はMSGに対して濃度0.08%で嗜好を示し,濃度上昇に伴い嗜好が強まることが認められ,0.32%以上でいずれの個体も非常に強い嗜好を示した.5'-IMPに対しては,個体差が認められたものの,濃度上昇に伴い嗜好が強まる傾向を示し,0.16%以上で強い嗜好を示した.また,牛はMSGよりも5'-IMPに対して低い濃度から嗜好を示したことから,5'-IMPに対してより敏感に反応するものと推察された.5'-IMPとMSGの混合物質に対しては,いずれの濃度でも嗜好を示したものの,個体差が認められた.さらに,0.02%の5'-IMPとMSGの混合物質に対して各物質単独よりも強い嗜好を示したことから,牛において旨味物質間の相乗効果があるものと推察された.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top