抄録
5週齢離乳後も食道溝反射を維持させたホルスタイン種雄子牛12頭(初体重103kg)を供試し,メチオニン(Met)過剰障害を確認する目的で12週齢から2週間の窒素(N)出納試験を実施した.試験期間中,初体重の2%に相当するトウモロコシ/大豆粕飼料を1日に半量ずつ08:30と16:30に給与した.子牛は4頭ずつ3区に分け,各区に(A)DL-Met 34.2g/日とL-リジン(Lys)塩酸塩11.4g/日,(B)それと等N量(35.2g/日)のカゼイン,または(C)非特異的N源として等N量(39.3g/日)のクエン酸ニァンモニウムのいずれかを割り当てて,1日分の半量ずつ温湯1.8lに溶解して朝夕の飼料給与直前に飲ませることにより食道溝経由で第四胃内に投与した.各期最終5日間の糞尿を全量採取し,最終日には朝の投与直前と3時間後に頸静脈から採血した.その結果,(A)の投与は(B),(C)に比べてN蓄積を低下させたばかりでなく,飼料摂取量と体重の減少も認められた.(A)によって血漿Met濃度は吸収期•吸収間期ともに(C)の50倍以上に増加したが,Lys濃度は吸収期にのみ5倍以下の増加にとどまり,それらの有害作用はもっぱらMetの過剰によることが示唆された(A)の投与は血漿スレオニン,セリン濃度を増加させた一方,側鎖アミノ酸およびフェニルアラニン濃度を減少させた.その結果,この場合のMet過剰障害の原因としてメチオンー側鎖アミノ酸拮抗またはメチオニンーフェニルアラニン拮抗が考えられたが,メチオニン毒性の可能性も完全には否定できなかった.さらに,(B)の投与は(C)に比べてN出納を有意に改善せず,3カ月齢以上の子牛にトウモロコシ/大豆粕飼料を給与した場合は制限アミノ酸が存在しない可能性を示唆したが,これについてもさらに検討が必要である.