日本畜産学会報
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蒸煮•爆砕処理が小麦わらの成分含量およびその反芻胃内分解様相に及ぼす影響
金 海浜名 克己菱沼 貢大浦 良三関根 純二郎
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1998 年 69 巻 3 号 p. 293-298

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抄録

蒸煮•爆砕処理した小麦わらの化学成分の変化およびそれらの反芻胃内分解様相を調べ,これをもとに処理効果の機序解明を試みた.蒸煮•爆砕処理は,4cmの長さに細切した小麦わらを10kg/cm2の圧力で10分間蒸煮し,さらに12kg/cm2まで圧力を上げて爆砕したものを処理1とし,8kg/cm2の圧力で10分間蒸煮し,さらに圧力を13kg/cm2まで上げて爆砕したものを処理2とした.無処理の小麦わらを対照区とした.これらのサンプルをナイロンパッグ法によりオーッ乾草を単独給与しためん羊の反芻胃内で培養した.蒸煮•爆砕処理により中性デタージェント繊維(NDF)およびヘミセルロース含量が減少した.乾物の易消化分画が両処理とも有意に増加し(P⟨0.05),不消化分画は両処理とも有意に減少した(P⟨0.05).処理1および処理2ともNDFならびにヘミセルロースの分解遅滞時間が有意に短縮し(P⟨0.05),培養初期の消失様相が改善された.また,処理1では,ヘミセルロースの分解速度も有意に増加した(P⟨0.05).セルロースの可消化分画は処理1で有意に増加した(P⟨0.05).酸性デタージェントリグニン(ADL)の分解遅滞時間は両処理とも有意に短縮した(P⟨0.05).また,ADLの可消化分画は,処理1で有意に増加(P⟨0.05)した.以上の結果から,この蒸煮•爆砕処理が繊維成分中のヘミセルロースおよびセルロース分画に対するリグニンの被覆あるいは化学的結合の解離を促進し,反芻胃内微生物による発酵分解を増加させたことが示唆されると結論した.

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