日本畜産学会報
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ルーメン微生物によるギ酸の代謝とメタン生成
浅沼 成人岩本 美和日野 常男
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1998 年 69 巻 6 号 p. 576-584

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抄録

ルーメンにおけるメタン生成を減少させるには,その基質の一つのギ酸をメタン菌以外の菌に多く利用させることが有利であるとの考えから,ルーメン微生物によるギ酸の代謝について調べた.微生物混合系において,糖を基質としギ酸生成速度を大きくした場合でさえもギ酸はほとんど蓄積されなかったので,普通はギ酸の生成よりも消費能力の方が上回ると考えられた.アンスラキノン(ATQ)によりメタン生成を抑制するとギ酸が蓄積され,またギ酸を添加した場合にはギ酸の消費量に見合う量のメタンが生成されたので,ギ酸はほとんどがメタンに代謝されると考えられる.メタン菌はギ酸脱水素酵素(FDH)を持ち,自身でギ酸をH2に転換した後に利用することが判明した.一方,メタン菌以外にもFDHを持つ菌が存在しギ酸をH2に転換することが確認されたが,C1ユニットとしての利用は極めて少ないと考えられた.Fibrobacter succinogenes, Selenomonas ruminantium, Selenomonas lactilytica, Veillonella parvula, Anaerovibrio lipolyticaなどがFDHをもつことが示された.微生物混合系でATQによりメタン生成を抑制した場合,およびメタン菌を排除した混合系にギ酸を添加した場合には,H2の蓄積により発酵の低下が見られたものの,プロピオン酸の生成割合が増加した.これはH2から生ずる電子がプロピオン酸生成反応系で利用され得ることを示し,それはそのような反応を行う菌がメタン菌と基質を競合する可能性があることを意味する.

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