日本畜産学会報
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タンパク質フリーSOF培養液によるウシ体細胞クローン胚の発育
志賀 一穂藤田 達男大竹 孝一木本 勝則
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2001 年 72 巻 7 号 p. 13-19

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抄録

合成卵管液培養液(Synthetic Oviduct Fluid; SOF)を用いて,体紐胞クローン胚の発生に及ぼす培養液へのタンパク質添加および培養器内の酸素濃度の影響にっいて調べた.体細胞クローン胚の胚盤胞期胚への発生率は,牛血清アルブミン(BSA)を添加したSOF (SOF+)中で5% O2,あるいは20% O2の酸素濃度で培養した場合,それぞれ38.6% (44/114),および34.3% (37/108)と高い値を示した.しかし,BSA無添加でPVPを添加したSOF (SOF-)での発生率は,5% O2では21.4% (27/126)とSOF+での培養に比べ有意に低く,20% O2濃度では全く胚盤胞期胚へと発生しなかった.培養6日目での胚盤胞期胚への発生率は,低酸素区(SOF+およびSOF-)に比べ高酸素区(SOF+)が高かった.胚盤胞に発育した体細胞クローン胚を延べ35頭の交雑種未経産牛に移植したところ14頭が受胎したが7頭が早期流産した.以上のことから,ウシの体細胞クローン胚は,血清類などのタンパク質を加えないSOFを用い,5%の低酸素気相下で培養すると受胎可能な胚盤胞期胚へと発生することが明らかとなった.血清類を添加したSOFでは酸素気相の高低にかかわらず胚盤胞期胚へと発生することから,血清類の添加には高酸素気相下で生じる活性酸素などフリーラジカルから胚を保護する効果があることが示唆された.

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