地球環境
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気候変動適応策の実装化を目指した叙述的シナリオの開発:農業分野におけるコミュニティ主導型ボトムアップアプローチと専門家デルファイ調査によるトップダウンアプローチの統合
馬場 健司土井 美奈子田中 充
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2016 年 21 巻 2 号 p. 113-128

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抄録

本研究は、農業分野における気候変動適応策を題材として、シナリオプランニング技法を手がかりに、ステークホルダー分析などを主体とするコミュニティ主導型のボトムアップアプローチと、専門家デルファイ調査によるトップダウンアプローチとの統合手法を開発し、ある地方都市への適用を通じて地方自治体における政策の実装化に係る知見を得ることを目的としている。手法開発については、ステークホルダー分析やステークホルダー会議で得られた知見を基に、気候変動と社会変動を起因とするストーリーを構成要素とする叙述的なシナリオ案を作成し、専門家デルファイ調査とステークホルダーへのシナリオ評価結果を経た上で、最終的に3つのシナリオを作成した。その政策実装については、個人としての気づきはあったと考えられる一方で、地域社会としての意思決定の質の向上の可能性については、長期的なリスクを予防原則的な視点から順応的に行政計画に組み入れることなど、行政計画立案のあり方を変えていく必要があり、そのための政策主体側への気づきを与えていくことが重要な課題として残されている。

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© 2016 一般社団法人国際環境研究協会
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