地理科学
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研究ノート
2010年・2015年の国勢調査からみた高齢人口の地域的特徴
森川 洋
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2018 年 73 巻 2 号 p. 35-49

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抄録

これまで高齢化率は大都市で低く,地方の小規模町村で高い状況が続いてきた。大阪市周辺や名古屋市周辺では高齢化率は依然として低いが,最近,東京大都市圏では高齢化率の上昇がみられる。一方,小規模な市町村では前期高齢人口の供給が乏しいため高齢化率の上昇が弱まり,後期高齢化率の方が高い町村も現れてきた。

中国地方の高齢者移動では県内中心都市を中心とした高齢人口の移動圏が形成されているが,東京大都市圏では東京特別区から転出する前期・後期高齢人口が周辺都市に定着し,周辺都市の高齢化率の上昇を助長している。

したがって,周辺都市の高齢化率の上昇は東京特別区よりも高く,高齢者施設の不足は東京特別区だけの問題ではない。東京特別区からの高齢人口の転出は比較的近距離の市町村に対して多いので,日本版CCRCが成功するには介護の不要な壮年期・中年期において地方に移住するよう都民の認識を高める必要がある。小規模町村では近い将来高齢人口が減少することを考えると,近隣の中小都市の施設を整備してその中心機能を強化するのが現実的な措置といえよう。

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