地理科学
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研究ノート
口コミの効果を通じてみる霊場の脱聖地化と広域化
――富山県「穴の谷霊場」を事例に――
鈴木 晃志郎島田 章代伊藤 修一
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2018 年 73 巻 2 号 p. 50-65

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抄録

対象者が未知の財やサービス,製品にアクセスするときに依拠するのがいわゆる口コミ(WoM)である。観光行動もサービスを選択・消費する消費行動の一つであり,リピート率の向上や顧客満足度の上昇に及ぼすWoMの効果に注目した分析の対象となりうる。そこで本研究は富山県の湧水池「穴の谷霊場」をとりあげ,来訪者の特性を分析するとともに,入込客数の維持にWoMがもたらす効果を調査した。半構造化インタビューを交えたアンケート調査により来訪者86人の類型化を行いその動機を分析したところ,病気治療,健康維持,味の良さでカテゴリー化される一方,当初の霊場としての場所性はその影響力を大きく失っていた。また来訪者の76%が信頼のおける肉親や知人からのWoM情報を最初の来訪のきっかけに挙げ,WoM研究の知見を裏付けた。開祖が世を去って40年,穴の谷は宗教的な聖地としてよりも,霊水を求める一種の自然信仰に支えられた観光地へと変容を遂げており,WoM効果は観光客数の維持に少なからず貢献していると考えられる。

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