本稿は疑問詞研究の新しい試みとして、近年言語類型論の分野で利用されている「意味地図理論(The Semantic Map Theory)」を用いて地点、指別、人、時点、類別、事物を尋ねる疑問詞の機能間の関連性に関し考察した。疑問詞の語構成の共通性から、地点、指別、人と時点、類別、事物という概念がそれぞれ内部で関連性の深い二組の概念であることを示し、概念空間を構築した。この概念空間を基にした諸方言の疑問詞の意味地図を特徴の違いから 2 タイプに分類し、従来吕叔湘 1985 等の指摘する漢語諸方言に見られる疑問詞の表現形式の多様性の背後には、機能間の関連性を根幹とする機能分布の差異があることを示した。