中国語の二重目的語構文では、通常の表現において目的語を二つ以上とらない動詞を用い、“她泼了我一脸酒”のような拡張的表現が構成されることがある。その際、数量詞にはしばしば“一身”“一脸”等のように S 類臨時量詞(量詞として借用された身体部位名詞)が用いられる。この種の拡張構文の多くは従来の説のように「攻撃」として解釈可能な意味特徴を持ち合わせるが、時に、偶発的事象に起因して出現する事物の遍満状態を間接目的語にふりかかる「被害」として叙述する例も観察される。両者は共に間接目的語にもたらされる影響に関心をおく表現であることから、本稿ではまずそれぞれの拡張構文の意味特徴を「加害」と「被害」とに区別して捉えなおすことを提案する。その上で、両タイプの成立要因について考察し、二重目的語構文の構文的意味と共に、S 類臨時量詞の描写機能がそれぞれのタイプの成立に疎密の差をもちつつ寄与していることを明らかにする。