Colloid & Interface Communications
Online ISSN : 2758-5379
巻頭言
明日のコロイド、今日の仕事
新留 康郎
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 48 巻 1 号 p. 1

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抄録

九州支部は40年近くにわたって高い活動度を維持してきました。来年で第37回を数える「九州コロイドコロキウム」は支部の主たる活動の一つであり、九州地区のコロイド科学に関わる研究者と学生諸君のレベルアップに貢献してきたと考えます。年によっては70名を超える参加者を集めて、国内だけではなく海外からの講演者も招待し、毎年勉強会を開催してきたことは九州支部を支えてきた先輩方の熱量の高さを示すものです。一昔前は1泊2日の合宿型の勉強会でした(初期は2泊3日だったこともあると聞いています)が、最近は2日間のシンポジウム形式になり、さらにコロナの混乱を受けて1日の開催になりました。今年は私、新留が世話人を務めて鹿児島で開催する予定です。さすがに今年の夏は対面での開催ができるものと信じております。鹿児島市はみなさんが思っているより少し都会で、みなさんが知っている以上に独特な自然環境・食文化があります。支部の活動ではありますが、参加者は支部メンバーに限定しておりません。九州コロイドコロキウムの詳細は決まり次第web等でご連絡しますので、今年は全国から鹿児島においでいただけるようお願い申し上げておきます。

さて、この原稿は元旦に書いているのですが、正月気分で楽観的に考えたとしても、この先、世界は一段と混沌として見通せない感じがしています。時代に合わせて社会も大学も変化しなければいけないわけですが、パンデミックや戦争、さらに国内の少子化が駆動してしまう変化というのは、より良くなる方向への変化というより、悪くなる度合いを軽減するための変化という感じがして、どうにも息苦しいです。新型コロナ対応時のように、突然否応なしに要求される変化に対応して、研究力・教育力を維持できる柔軟さと賢さと体力を我々が持ち続けられることを祈ります。本当は維持だけではなく、世界と戦えるように改善をしなければいけないわけで、坂の上の雲を見上げながらもため息、という個人的感想です。

九州支部も単純に明るい未来図を描くことは難しいです。少なくとも、若い世代のメンバーを集めていかなければ遠くない将来に存亡の危機に直面することは間違いありません。しかし現状では、各大学の教員の削減が続き、大学院生はインターンシップなどに色々多忙で、成長を前提とした活動モデル(昭和的と言うべきか)は立てにくい状況です。世の中が大きく変わる時に柔軟に対応できない組織が機能不全に陥るというのはよくある話です。少子化とネットワーク化の時代に、地域性と濃密な人間関係に立脚している支部活動を健全に維持するにはどうしたら良いか、私も明確な解答は持ち合わせませんが、諦めてはいけないと思う2023年の正月です。

とりあえずは、この原稿を仕上げて、正月休み中に今年度残りの講義をハイブリッドにする準備を済ませて、年明けすぐに冬季休業中の理学部のエネルギー消費についてのレポートを作って、滞っている講義レポートの評価を済ませます。しかる後に、(坂の上の雲かもしれない)学術研究の普遍的な価値を信じて、続く世代に少しでも明るい未来図を描いて見せなければとは思うところではありますが、その前に入試業務がいくつか入ってきますね。仕事の効率を上げねば、です。

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© 2023 公益社団法人日本化学会コロイドおよび界面化学部会
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