Colloid & Interface Communications
Online ISSN : 2758-5379
48 巻, 1 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
  • 新留 康郎
    2023 年 48 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/04/05
    ジャーナル オープンアクセス

    九州支部は40年近くにわたって高い活動度を維持してきました。来年で第37回を数える「九州コロイドコロキウム」は支部の主たる活動の一つであり、九州地区のコロイド科学に関わる研究者と学生諸君のレベルアップに貢献してきたと考えます。年によっては70名を超える参加者を集めて、国内だけではなく海外からの講演者も招待し、毎年勉強会を開催してきたことは九州支部を支えてきた先輩方の熱量の高さを示すものです。一昔前は1泊2日の合宿型の勉強会でした(初期は2泊3日だったこともあると聞いています)が、最近は2日間のシンポジウム形式になり、さらにコロナの混乱を受けて1日の開催になりました。今年は私、新留が世話人を務めて鹿児島で開催する予定です。さすがに今年の夏は対面での開催ができるものと信じております。鹿児島市はみなさんが思っているより少し都会で、みなさんが知っている以上に独特な自然環境・食文化があります。支部の活動ではありますが、参加者は支部メンバーに限定しておりません。九州コロイドコロキウムの詳細は決まり次第web等でご連絡しますので、今年は全国から鹿児島においでいただけるようお願い申し上げておきます。

    さて、この原稿は元旦に書いているのですが、正月気分で楽観的に考えたとしても、この先、世界は一段と混沌として見通せない感じがしています。時代に合わせて社会も大学も変化しなければいけないわけですが、パンデミックや戦争、さらに国内の少子化が駆動してしまう変化というのは、より良くなる方向への変化というより、悪くなる度合いを軽減するための変化という感じがして、どうにも息苦しいです。新型コロナ対応時のように、突然否応なしに要求される変化に対応して、研究力・教育力を維持できる柔軟さと賢さと体力を我々が持ち続けられることを祈ります。本当は維持だけではなく、世界と戦えるように改善をしなければいけないわけで、坂の上の雲を見上げながらもため息、という個人的感想です。

    九州支部も単純に明るい未来図を描くことは難しいです。少なくとも、若い世代のメンバーを集めていかなければ遠くない将来に存亡の危機に直面することは間違いありません。しかし現状では、各大学の教員の削減が続き、大学院生はインターンシップなどに色々多忙で、成長を前提とした活動モデル(昭和的と言うべきか)は立てにくい状況です。世の中が大きく変わる時に柔軟に対応できない組織が機能不全に陥るというのはよくある話です。少子化とネットワーク化の時代に、地域性と濃密な人間関係に立脚している支部活動を健全に維持するにはどうしたら良いか、私も明確な解答は持ち合わせませんが、諦めてはいけないと思う2023年の正月です。

    とりあえずは、この原稿を仕上げて、正月休み中に今年度残りの講義をハイブリッドにする準備を済ませて、年明けすぐに冬季休業中の理学部のエネルギー消費についてのレポートを作って、滞っている講義レポートの評価を済ませます。しかる後に、(坂の上の雲かもしれない)学術研究の普遍的な価値を信じて、続く世代に少しでも明るい未来図を描いて見せなければとは思うところではありますが、その前に入試業務がいくつか入ってきますね。仕事の効率を上げねば、です。

特集記事
  • 藤井 英司, 中村 竜太, 大久保 義真, 久住 孝幸, 落合 剛, 濱田 健吾, 小林 慶一, 石黒 斉, 波多野 諒, 中野 万敬, 山 ...
    2023 年 48 巻 1 号 p. 2-19
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/04/05
    ジャーナル オープンアクセス

    国内には国立研究開発法人等の国立の研究機関だけでなく都道府県ならびに市立の研究所・センター(地方公設試験研究機関等)などが数多くあります。特に地方の研究所・センターは各地域の特色を生かした・地域の発展を支える研究・開発をされてきておられます。また、これらの研究所・センターにおいてコロイド・界面化学関連の研究についても数多くなされております。その一端をご紹介いたします。このご紹介を通して、各センター・研究所で研究をしている研究者の皆様方と本部会との交流の足掛かりともなればとも考えております。

    今回、岡山、秋田、神奈川、名古屋の各地域において、地域の産業・学術を担う研究組織である、岡山県工業試験センター、秋田県産業技術センター、神奈川県立産業技術研究所(KISTEC)ならびに名古屋市工業研究所におけるコロイド・界面化学分野の研究を紹介いたします。

     

    〔1〕セルロースナノファイバー素材の界面制御技術を利用した金属ナノ粒子との複合化に関する研究

     岡山県工業技術センター 応用技術部 食品・繊維科 藤井 英司

    岡山県工業技術センターの業務とナノ材料の複合化に関する研究事例を紹介する。「高圧湿式ジェットミル」を用い、マイクロ空間内での高剪断力およびキャビテーション効果を利用した複合化手法を開発した。セルロースナノファイバー素材の界面を制御し、金属ナノ粒子を複合化させたナノ複合体を作製し、特性評価をおこなった。

    〔2〕微小液滴撹拌を可能とする電界撹拌技術の開発とその応用

     秋田県産業技術センター 中村 竜太・大久保 義真・久住 孝幸

     

    〔3〕抗菌・抗ウイルス効果から空気清浄機まで ~光触媒評価総合サポート

     地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC) 溝の口支所 川崎技術支援部 落合 剛・濱田 健吾

     地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC) 殿町支所 研究開発部 小林 慶一・石黒 斉

    (地独)神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)は、神奈川県内中小企業を中心とする産業界から信頼される公設試験研究機関として、県内産業と科学技術の振興を図ることにより、豊かで質の高い県民生活の実現と地域経済の発展に貢献しています。本稿では、KISTECの溝の口支所と殿町支所が連携し、中心となって展開している「光触媒評価総合サポート」の概要と、主な研究成果を紹介します。

     

    〔4〕液面プラズマを活用した金ナノ粒子担持複合粉体の調製

     名古屋市工業研究所 システム技術部 製品技術研究室 波多野 諒

    気中電極と液面との間でプラズマを発生させる液面プラズマ処理技術を用いて、水溶液中で金イオンを還元し、アルミナ等の粉体上に粒径10~20nm程度の金ナノ粒子を均一分散担持させる手法を見出した。得られた金ナノ粒子担持複合粉体は、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴に由来する鮮やかな赤色の色調と抗菌性を示した。

     

    〔5〕ゲル化と結晶化を利用した超撥水表面の形成

     名古屋市工業研究所 材料技術部 中野 万敬・山中 基資

    接触角が150°以上である超撥水表面を植物由来原料から作製する手法を開発した。この表面は、低分子ゲル化剤が形成する一次元の自己組織体と脂肪酸が形成する微結晶とで構成された階層的な凹凸構造により超撥水性を発現している。本稿では、超撥水表面形成のメカニズムとこの表面が摩耗した後の接触角の自己復元性について述べる。

     

    〔6〕名古屋市工業研究所 表面技術研究室

     名古屋市工業研究所 松井 則男

Interface
Interface(若手注目研究)
Topics
研究室紹介
奨励賞受賞者によるReview
リレートーク~コロイド・界面との懸け橋
部会から・会告
feedback
Top