2024 年 49 巻 4 号 p. 13-17
2003年にひとまず完了したヒトゲノム計画の副産物として、タンパク質をコードしないRNAが大量に転写されていることが明らかになった。それでは、これらのノンコーディングRNAは生体内でどのような機能を果たしているのだろうか?ノンコーディングRNAのうち、現在最も機能解析が進んでいるのがマイクロRNA(miRNA)と呼ばれるわずか22塩基長ほどの小さな1本鎖RNAである。miRNAはメッセンジャーRNAの主に3’非翻訳領域に結合し、mRNAを分解したり、mRNAからタンパク質への翻訳を抑制することで遺伝子発現を負に制御する。これまでの研究からmiRNAによる遺伝子発現制御は生物の発生から疾患まで多くの生命現象に関わっていることが分かってきた。これまでにmiRNAの生合成の仕組みが盛んに研究されてきた一方、miRNAの分解に関してはほとんど不明である。本稿では生体内のmiRNAの動態についての我々の知見を紹介する。