抄録
近年解析技術の発達とともにタンパク質の立体構造データベースが急速に発展しつつある。立体構造データには創薬に有用な知見が多く含まれていると考えられるが、原子座標の集まりである構造データから知見を効率的に抽出、活用する為の手段に乏しい現状にある。そこで我々は豊富に蓄積された立体構造情報を包括的に活用するタンパク質-リガンド結合様式予測手法の開発を行った。本手法では既知立体構造データからアミノ酸残基-リガンド断片間相互作用情報を抽出し、それを元に構造探索やエネルギー計算を行わずに任意のタンパク質-リガンド複合体立体構造を予測する。本手法は決して精度は高くないが極めて高速であり、通常のドッキング計算に先立って高速に候補構造を絞り込む為のフィルタとしての利用が期待できる。114複合体について行った検証計算では8割程度の確度で候補構造を100個まで絞り込むことに成功した。