抄録
がん治療では手術と併せて化学療法や放射線療法が行われている。これらの治療によって、がんが根治したように見えても再発してしまうことがある。その原因は、がん組織の中に治療抵抗性を持つがん幹細胞が存在するからではないかと考えられてきた。抗がん剤のような外部の刺激に対する細胞の応答を観測するためには、このような一つ一つの観測時におけるスナップショットではなく、経時的な挙動変化を観測することでがん幹細胞の特性を理解することが重要となる。しかしながら、既存手法では経時的な変化を観測することができなかった。そこで本研究では、複数の実験結果から代謝の経時変化を抽出するためのトランスオミックス手法を開発した。この手法を用いて、抗がん剤曝露前後におけるがん幹細胞と非がん幹細胞の代謝反応速度変化を解析することにより、がん幹細胞がもつ特徴を理解することを目的とした。