リアルオプションと戦略
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査読論文
インバウンドとフードツーリズム
安田 亘宏
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2015 年 7 巻 2 号 p. 32-46

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抄録

今日、インバウンド、すなわち訪日外国人 旅行者の急伸がツーリズム産業においてだ けでなく社会現象とし注目を集めている。 2014 年に日本を訪れた外国人旅行者数i) は、前年比29.4%増の1,341 万人であった。 これは、2003 年に政府が観光立国を宣言し、 観光立国推進基本計画において当初2010 年の達成を目標としていた1,000 万人を突 破し1,036 万人という過去最高の旅行者数 を記録した2013 年をはるかにしのぐ旅行 者数となった。 2020 年の東京オリンピック・パラリンピ ックの開催が決定し、インバウンドのさら なる拡大に大きな期待が寄せられている。 政府は2020 年に訪日外国人旅行者数2,000 万人の目標を掲げた。2015 年も拡大は続き、 円安の傾向や一時落ち込んでいた中国人旅 行者の増加などにより1,500 万人を超える と予想される。日本のインバウンドが新た なステージに入ったと言える。 その訪日外国人旅行者の訪日の動機、目 的、日本での活動の中で、「日本の食」が注 目されている。そのまま英語にもなってい る寿司、刺身、天ぷら、すき焼きだけではな く、ラーメンや居酒屋食など広がりを見せ ている。 一方、日本の国内旅行においても「地域の 食」が注目を集め、多くの旅行者を安定的に 呼ぶ重要な観光資源となってきている。 1970 年代から、地域の旬な食材や地域独特 の高級料理、郷土料理を求めるグルメツア ーが定着し、1990 年代に入るとご当地ラー メンブーム、B 級グルメブーム、ご当地グル メブームなどの庶民食もその対象となった。 このような観光現象は「フードツーリズム」 と言われ、観光市場の成熟に伴い、旅行者の ニーズが多様化、個性化する中で大きなポ ジショニングを占めるようになってきた。 また、地域経済の衰退傾向が続く中で「地域 の食」を観光資源化し観光まちづくりに取 り組んでいる地域が数えきれないほど存在 している。 本稿は、日本のインバウンドの拡大にお ける「日本の食」資源と、日本だけでなく世 界の潮流となっているフードツーリズムと の関係性、その観光現象を活用しての取組 みの可能性を考察する。

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