理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: AO011
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主題(科学的根拠に基づく理学療法)
当院における人工股関節全置換術(THA)後のクリニカルパスの効果と課題
機能評価とヴァリアンス検討を通して
*鐘司 朋子相澤 孝一郎鍋城 武志蘭 康昭飯田 哲丹野 隆明
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抄録

【はじめに】昨年より当院整形外科のセメントレスまたはハイブリッドTHA患者に対し、片側罹患例は術後3週間、両側罹患または術前歩行不能例は術後4週間を退院目標とした術後早期全荷重のクリニカルパス(以下CP)を試行してきた。今回その機能評価とCPを逸脱したヴァリアンスの検討を行いその効果と問題点を考察し報告する。【対象と方法】対象は平成13年5月から14年10月に当院でTHAを受け退院または転院した患者41名。年齢は43歳から87歳の平均64歳、女性38名男性3名。疾患は変形性股関節症40名、骨頭壊死1名。手術は前外側侵入でセメントレス19名ハイブリッド22名。使用機種はデピューまたはジンマー社製を使用した。41名中3週退院目標患者は15名、4週退院目標患者は26名。術前と退院予定時にJOAスコアにて評価を行った。プログラム達成群(以下T群)とヴァリアンス群(以下V群)の術前、退院予定時評価結果の比較及びそれぞれの術前と退院予定時の間の比較を行い、ヴァリアンスの内容を検討する。統計処理はWilcoxonの符号付き順位和検定とMannWhitney検定を使用、5%有意水準とした。【プログラム】入院初日より評価とADL、筋力トレーニング指導を行う。術翌日よりベットサイドにてPT開始。術後3から4日で病棟にて車椅子乗車、全身状態が許せば全荷重許可で平行棒内から歩行訓練開始。以後杖歩行、応用動作と進め3週で退院となる。4週目標患者は杖歩行開始以降が3から4日 遅れるが流れは同様である。【施行結果】3週退院目標患者うちT群は13名V群は2名。87%が目標退院。4週退院目標患者うちT群は16名V群は10名。62%が目標退院。V群総数12例中8例は目標退院遅延して自宅退院、4例は転院した。【評価結果】合計点数および疼痛、可動域、ADLにおいて両群とも術前と退院予定時に有意差がみられた。両群間においては合計点及び歩行、ADLの退院予定時の値がT群に有意に高値を示した。【ヴァリアンスとなる誘因】V群が退院水準に及ばなかった誘因の内訳は術後全身状態不良4名、脱臼2名、脚長差1名、家庭環境問題2名、精神不安3名がある。【考察】当CPにおいて関節可動域の早期獲得および退院水準のADL獲得も可能であり、平均在院日数がCP以前の78日から36日に減少した事をふまえると術後早期全荷重の当CPが早期退院に関して有効である事が示唆される。V群においては退院水準のADL値迄の改善は困難であった。その誘因の家庭環境と精神不安評価は術前に可能であり、退院時に向けて他職種と連携して環境整備とADL指導および本人と家族の早期退院への理解を徹底することでよりCPを有効にしていくことができると思われる。術後誘因の全身状態の不良、脱臼、脚長差に関しては状態が落ち着き次第カンファレンスを行い今後の治療目標と期間を決定することが重要である。

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