抄録
【目的】 超音波療法は、温熱効果と非温熱効果が考えられている。連続モード照射では組織温の上昇により、温熱効果が得られる。パルスモード照射では、機械的な微細振動により、組織細胞の機能亢進、創傷治癒の促進効果などがあると考えられている。そこで、パルスモード超音波照射による創傷治癒の生物学的効果を生化学的に検討した。【方法】7週齢Wistarラット44匹を実験に供した。これらを麻酔下で背部を縦切して、30μlの生理食塩水をしみ込ませたペーパーディスク(以下ディスク:直径8mm,厚さ1.5mm)を皮下に埋入し、創を縫合した。ラットを対照群(11匹)と超音波照射群(33匹)に無作為に分け、後者をさらに3群に分け、超音波を照射した。照射時間10分、時間率20%は同一条件とし、それぞれ0.25(低出力群)、0.50(中出力群)、1.00W/cm2(強出力群)で7日間超音波を照射した。実験終了後、麻酔下で肉芽組織に被われたディスクを摘出した。その後、ディスクを取り囲んでいる組織を剥離し、湿重量を測定した。組織を細切した後、上清液と沈渣とに遠心分離した。上清液中のヘモグロビン量をヘモグロビンBテストワコー試薬を用いて比色定量(OD.540nm)した。また、沈渣は凍結乾燥させ、組織の乾燥重量を測定した。尚、実験動物の取り扱いに関しては、本学の定める「動物実験に関する基本指針」(金沢大学宝町地区動物実験指針)を遵守していると承認されたものである。【統計】一元配置分散分析後、Tukey-Kramer検定で有意差を検定した。【結果】対照群および周波数3MHz、時間率20%の共通条件下の超音波照射群(低、中、強出力)のヘモグロビン含量は、平均2.091mg/ml、2.736mg/ml、3.482mg/ml、4.258mg/mlであった。対照群に比較し、超音波照射強出力群のヘモグロビン含量が有意に増加した。対照群および超音波照射群(低、中、強出力)の肉芽湿重量は、平均239.51mg、238.06mg、258.10mg、297.63mgであった。対照群に比較し、超音波照射強出力群の湿重量が有意に増加した。また、対照群および超音波照射強出力群の肉芽乾燥重量は平均8.09mg、9.81mgで、肉芽組織の増殖傾向が確認できた。【考察】超音波照射により組織中のヘモグロビン含量が増加し、組織中の循環血液量の増加が推測された。ペーパーディスク周囲の組織重量増加とともに、顕微鏡下で組織像を観察した結果、血管新生や肉芽組織が増殖していた。超音波照射時間率20%では、湿重量、乾燥重量も出力強度が高いほど増加しており、肉芽組織の増殖促進効果が認められた。これらの所見より、パルスモード照射による超音波には、創傷治癒を促進する生物学的効果があると結論づけられる。