抄録
【はじめに】歩行時の下腿三頭筋(TS)は特に立脚後期に活動し推進力を生み出すと解釈されている。しかし,TSが立脚相後期のいつ活動を終え,どの程度の推進力に寄与しているかについては明らかではない。そこで本研究では,自然歩行での立脚相におけるTSについて,表面筋電図(EMG)上での活動(筋電活動)終了について計測し,同時期における床反力と関節角度変化をあわせて解析し筋機能を明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は健常成人男性5名(26.2±3.6歳)であった。各々被験者について,至適速度での屋内歩行を3回行った。右下肢立脚相の下肢関節角度変化の計測は3次元動作解析装置(Motus, Peak社)を用い、床反力の計測は多成分床反力計(9287A, Kistler社)を用いた。同時に前脛骨筋(TA),ヒラメ筋(SOL),腓腹筋外側頭(GL)・内側頭(GM)のEMGをMulti Telemeter System(ER/EB-851G, 日本光電)を用いて導出した。床反力,関節角度変化,EMGデータの時間軸は右踵接地を0%,右足尖離地を100%として正規化し,筋電活動終了は振幅が安静時振幅最大値を越えなくなった時点とした。【結果と考察】筋電活動終了については,GL・GM共に86±3%,SOLは87±2%の時点であった。足関節は立脚初期に一度底屈し,その後背屈を続け,73±4%の時期に底屈方向に転じた。また床反力前方成分(FX)のピークは90±2%の時点で見られ, GL, GM,SOLの筋電活動終了に比較して有意に遅れていた(p<0.01)。また,SOLの筋電活動が消失した時点における床反力垂直成分(FZ)の大きさは,被験者の体重に対して65±6%であった。自然歩行でのTSは立脚相後期の一定の時刻において筋電活動を終え,立脚相終了にかけての足関節底屈運動に関与する期間は短いことが分かった。TSの筋電活動終了時におけるFZやFXの力源として腓骨筋群や長母指屈筋等の底屈筋,足内在筋の関与が考えられる.また筋電活動終了と筋張力の終了との関連は今後検討していく課題である。