理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: CP310
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運動学
頭頸部屈曲角度の違いにおける顎関節の運動解析
*橋田 浩宮本 重範大森 圭青木 光広
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抄録
【はじめに】顎関節症(Temporomandibular Joint Disorders:TMD)は近年、我が国で増加傾向にある。顎関節症は咬合不全が原因とされていたが、現在では歯ぎしりなどの慢性外力、交通事故や喧嘩による外傷、発育異常や骨格奇形などの解剖学的因子、不安やストレスなどの心理社会学的因子が作用しあうことにより発症する多因子性疾患であると考えられている。顎関節症に対する理学療法は欧米では積極的に行われているが、我が国では理学療法の重要性は認識されておらず、治療は主として歯科領域で行われることが多く、チーム医療として系統的な治療法は確立されていない。本研究では頭部前方位と顎関節症の顎運動との関連性を明らかにするために超音波式3次元動作解析機を用いて顎関節の運動分析を行い、両者における顎関節運動の量的、質的な違いを調査した。 【方法】対象は顎関節症の3大症状である顎関節部の疼痛、関節雑音、開口障害のうち少なくとも1つ以上の症状を持つもの15名(有症者群:男性5名、女性10名、平均年齢25.6歳±4.3歳)、と全く症状のないもの15名(健常者群:男性5名、女性10名、平均年齢23.7歳±3.0歳)とした。測定は自然垂直位と頭部前方位の2つの姿勢で最大開口を3回行い、左右下顎頭、オトガイ部における前後、上下、左右方向、すなわち3箇所3方行、合計9方向への動作軌跡を記録した。有症者群と健常者群での各方向の軌跡と移動距離を頭頸部の肢位別で比較した。 【結果】最大開口運動時の左右顎関節の軌跡は健常者群で左右対称的であったのに対して、有症者群では左右非対称であった。また、オトガイ部の軌跡は健常者群で直線的であったのに対し、有症者群では軌跡が片側へ偏位するもの(6名)、開口時と閉口時の軌跡が異なるもの(4名)、また開口時と閉口時の軌跡が一定でないもの(1名)を認めた。健常者群では自然垂直位と比較して頭部前方位での左右下顎頭、オトガイ部での大多数の方向の(9項目中7項目、以下7/9)動きが大きかった。障害者群では自然垂直位での左右下顎頭、オトガイ部での大多数の方向(6/9)での動きが頭部前方位と比較して大きかった。 【考察】3次元動作解析装置による顎関節の運動解析により、開口運動における健常者群と有症者群の顎関節の動きに微細なパターンの相違がみとめられた。有症者群には左右の下顎の非対称的な動きが存在することが示され、オトガイ部の開口時の運動軌跡が偏位していた。頭頚部の位置の違いによる顎関節運動の違いを統計上明らかにすることはできなかったが、健常者では頭部前方位での下顎の動きが大きく、有症者群では反対の傾向が認められた。この理由は明らかではないが、今後の顎関節症の調査により詳細が解明されると考えられる。3次元動作解析装置による顎関節の動作解析を顎関節症の患者の動態検索に応用できる可能性がある。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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