理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: CP568
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運動学
「立ち上がり動作」の基準モデル
適切な動作指導のために(第2報)
*帯刀 隆之
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抄録
【はじめに】理学療法で実施される関節可動域運動や筋力強化運動,動作練習など特に従来から標準的な方法で行われている運動種目ひとつひとつについて,理論的根拠を検証,確立していくことが必要かつ重要であると考えている.本研究は,第37回当学会にて報告した第1報に続くもので,腰掛け位からの立ち上がり動作と動作スピードとの関係を調査し,最適な運動,指導を実施する上での指標を得るための「立ち上がり動作の基準モデル」を作成することを目的にしたものである. 【対象と方法】健常人38名(男性22名,女性16名.年齢中央値27歳〔範囲46-18〕,平均身長165±7.9cm,平均体重60±8.8kg).腰掛け位からの立ち上がり動作を,身体左右が対称な動作と考え右矢状面から位置の変位,関節角度の変化を測定した.下腿長を指標に椅子座面高を設定し,動作スピードは1)被験者の任意の速度とする自由速度(以下Free),2)メトロノームを用いて目標動作時間3.6から4.5秒の遅い速度(以下Slow),3)同1.1から1.5秒の速い速度(以下Fast)の3群とした.各条件群を3回試行し第2試行目からデータを取得し個人の測定値とした.測定には3次元動作解析装置Oxford Metrics社製VICON240を用い,臨床歩行分析研究会が提唱する方法で左右10ヵ所の関節点にマーカーを貼付し,各点の位置変位,股・膝・足関節角度の変化を計測した.条件間の比較には1元配置分散分析を用い,有意差が認められた場合にはシェフの多重比較を行った.【結果と考察】1)自由速度における平均動作時間は2.01秒であった.2)股最大屈曲角度がFreeとslow,FastとSlowの間で,足最大背屈角度がFastとSlowの間で有意な差を示し,動作が遅くなるほど股最大屈曲,足最大背屈角度が増大した.動作スピードが異なっても膝関節運動は影響を受けず一定であった.3)動作開始からの股屈曲,足背屈の最大角度発生タイミングと肩峰点最前方到達タイミングとはいずれの条件間でも有意な差を認め,動作が遅くなるほど発生タイミングは早まった.4)上体前傾の指標として肩峰点の最前方到達点を足関節点から肩峰点までの距離として求めた.Fastの平均11.3cmからSlow平均19.9cmと,動作が遅くなるほど上体は前傾していることが確認できた.しかし,その移動距離は足底面前後長内に留まることが推測された. はじめ殿部と両足底とで囲まれる支持基底面を両足底のみの基底面へと移行させていく過程で,動作の速度が遅くなるほど,動作後半の両足底面内に重心を移動させ立ち上がるために早めに殿部離床し,必ず体重心を支持基底面内に留めながら立ち上がる.一方速い動作では,体重心が支持基底面外であってもいわば動的バランスを保ちながら立ち上がっていく様子を確認することができた.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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