抄録
【目的】Jonesら(1999)や中谷ら(2002)は,30秒椅子立ち上がり(以下CS-30)テストが下肢伸展筋の筋機能(筋力,筋パワー)の簡易評価法として有効であることを報告している.しかし,このテストが下肢伸展筋の筋機能を評価しているか,またその評価が妥当であるか十分な検討がなされていない.今回我々は,若年女性を対象にCS-30テストと主に関連する筋の特定,その筋機能の特徴について検討したので報告する.【対象】対象は下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健康な若年女性20名,年齢21.5±0.5歳,身長159.3±5.1cm,体重53.1±8.2kg,体脂肪率27.9±4.5%,BMI20.9±2.5kg/m2とした.【方法】CS-30テストは40cmの訓練用台を用い,胸の前で腕を組んだ座位姿勢から直立姿勢まで立ち,開始時の座位姿勢に再び戻る運動を30秒間繰り返させた.下肢筋力,筋パワーの測定はCYBEXを用い,測定筋は股関節,膝関節の屈曲および伸展筋,足関節の底屈および背屈筋とした.運動様式は求心性等速運動とし,運動速度は低速(60deg/sec),中速(180deg/sec),高速(300deg/sec)を5回ずつ測定した.筋力値は最大トルク値の体重比(Nm/kg),筋パワー値は平均パワー値の体重比(watts/kg)とした.統計処理はピアソン相関係数を用い,5%水準未満をもって有意とした.【結果】CS-30テストの平均値は23.4±5.6回であった.筋力の平均値は,すべての関節筋において運動速度が低速のとき最も高い値を示した.筋パワーの平均値は,すべての関節筋において運動速度が中速のとき最も高い値を示した.CS-30テストと筋力の関係は,股関節屈曲筋の中速(r=0.47),股関節伸展筋の中速(r=0.47)および高速(r=0.47),膝関節屈曲筋の高速(r=0.53)に相関がみられた.筋パワーでは,股関節伸展筋の中速(r=0.45)および高速(r=0.46),膝関節屈曲筋の高速(r=0.55),足関節底屈筋の高速(r=0.56)に相関がみられた.【考察】今回の結果から,CS-30テストは股関節伸展筋の主動筋である大殿筋および膝関節屈曲筋のハムストリングスを主とする下肢後面筋の筋パワーと関係していることが示唆された.筋パワーは筋が発揮した力と筋収縮速度の積で表され,その速度は筋線維長や筋線維タイプの活動に依存している.この活動は筋組成にも影響されるが,中枢,末梢神経系や介在ニューロンなどによって運動内容に適応するよう速筋と遅筋を選択的に動員・抑制されていると考えられている(Moritaniら 1991).したがって, CS-30テストの妥当性は反復練習による回数の変化も含めた再検討,また筋機能が低下する加齢変化との関係ついて検討する必要があると思われる.